
おかげさまで、エス・キュー・シーは創立30周年を迎えました。
今回は同じく20周年という節目を迎えられる弊社のお客様で、代表倉田の古くからのご友人でもあります『株式会社AIVICK』代表 矢津田 智子様をお迎えして、『人材教育』、『風土・企業文化』、『これからの展望』、『挑戦、イノベーション』をテーマに対談させていただきました。
株式会社AIVICKは元々はシステム開発をメイン事業としたIT企業でしたが、代表である矢津田様ご自身のある出来事をきっかけに、人々の健康を支えるフードテック事業を始められた、という少し変わったヒストリーを持っていらっしゃいます。
そんなちょっとユニークで熱い思いと体現力を持った矢津田社長のお話にはたくさんの「学び」や「気づき」がありました。

《profile》矢津田 智子氏(やつだ ともこ)/株式会社AIVICK 代表取締役 社長
2005年 株式会社AIVICKを設立。
同社はソフトウェア開発、システムエンジニアサービスをメイン事業とするIT企業として京都の地に誕生しましたが、その後、人々の「健康」を支えたいとの思いから「食」と「健康」の新規事業を立ち上げられました。
経営者ふたりの最大関心事は『人材教育』。
お二人が「教育」を通して社員に伝えたいことを紐解いていくと、そこにはその会社の真髄が感じられました。

矢津田様から色々なお話をお伺いするつもりが、逆に「聞き上手」、「話させ上手」な矢津田様に質問攻めにされる倉田。
矢津田様:私、色々聞きたいなって思うのは、社長のリーダー教育とか技術者教育とかすごく聞きたいと思っていたんですよね。
倉田:こちらがインタビューするつもりだったのに、矢津田さん聞き上手ですね(笑)
矢津田様:はい(笑)めちゃめちゃ聞きたいですもん。教育とか採用の仕組みとか。
倉田:今は採用も教育も副社長の齋藤くんに任せているからな。ただね、やっぱりITの会社って「人」が全てじゃない。
矢津田様:そうですね。
倉田:技術力とかその会社の潜在的な力っていうのは、社員のひとりひとりが持ってる力とも言えるわけで、会社としてはそこに投資をしないといけない。そうじゃないと事業って成長しないと思うんですよね。
矢津田様:なるほど、どんな投資をしてこられたんですか、今まで。
倉田:一言で言うと教育ですよね。それと社員のモチベーションは大切にしています。ここにいる副社長の齋藤くんも言っていたんだけど「やりたいということを尊重してあげる」、っていうのもそのうちの一つかな。あと、うちも社員数がだいぶ増えてきたから、「教育、人づくり」と並んで取り組んでいるのが「組織づくり」ですね。社員一人一人が高いパフォーマンスを発揮できるようにすることに取り組むのが「教育」だとしたら、チームとしての成果を上げることが「組織作り」で、私たちの会社にはそのどちらが欠けてもいけないと思っています。
矢津田様:その組織を運営する上で、マネジメントであったりとか、そういう部分って先ほど仰っていた教育投資ってどんなことをされていらっしゃるんですか。
倉田:今は研修ですね。
矢津田様:でも、スペシャリストとそのマネージャーさんというかゼネラリストは違うじゃないですか。同じ教育じゃないんですよね。
倉田:そうですね、技術が主軸になるんだけど、組織の上位職になってくるとそのウェイトがだんだん管理能力の方にかかってきます。今、うちの組織は役員が3名いて、その下に部長が2名いて、さらにその下に課長が5名いて、全体で社員数が約70名ほどいるんですけど、今その課長向けにマネジメント研修もやっています。
矢津田様:なるほど。それで、今新卒採用されてらっしゃるその方たちを順繰りにマネージャー層、スペシャリストと育てていかれて、今後10年でどれくらいまで広げていこうとされていらっしゃるんですか。
倉田:副社長と100名にはしたいなと言っています。100名になると結構好きな事ができると聞いているので。(規模が)小さい時って何をやるにしても仕組みになっていないですよね。ところが、ある程度の規模になるとそれが仕組化していく。
矢津田様:再現性を作っていかないといけないですもんね。で、その教育として再現性を生み出すようなそういう教育もされていらっしゃる。
倉田:そうですね、それと「技術教育」に関しては今オンラインで現場のエンジニアが好きな時に学習できる社内コンテンツを作ったんです。受託業務という性質上、エンジニアは普段お客様先であったり、在宅の人もいたりバラバラの場所で仕事をしているからなかなかみんな集めて集合教育っていうのが難しいんですけど、そこでうちオリジナルの社員教育専用のポータルサイトを立ち上げて、時と場所を選ばずに学べる機会を作るっていうのをうちのもう一人の技術担当役員を中心に今期から取り組んでいます。
矢津田様:それはすごいですね。
倉田:ありがとうございます。ところで、うちがインタビューされる側になってないですか(笑)
矢津田様:なかなかこんなに話す機会もないというか久しぶりなので、色々知りたくて。今まで聞いてみたいと思っていたことがついあふれちゃいました(笑)
「技術」は「経験」と「知識」の両輪で回していかないと「技術」に昇華されない。
そして漫然と仕事をしているだけではどれだけ長く現場にいても、そこから学ぶことは少ないでしょう。
だから私は伝えられる限りの知識を伝えることはもちろん、社員のモチベーションを維持したり上げてあげられるようにすることで「社員自らが学ぶ意欲」を育てることを大切にしています。
ー株式会社エス・キュー・シー 代表取締役 倉田 克徳

倉田:貴社では人材教育に関してどんなことをされてるんですか。
矢津田様:うちは、なんかちょっと特殊かもしれないんですけど、「心の教育」というか「考え方の教育」っていうのをやっていますよね。
倉田:それ大事だね。
矢津田様:例えばなんですけど、『誰かがこう言ったから頭にくるわ』とか、『誰かがこれやらないから私ができないんだ。』とか『そういう環境だから私できなくていいんだ。』とか周りの人のせいにしちゃって結局自分は何もしない、っていうような考え方でいると、その人本人も成長しません。だからまず、すべて周りで起こっていることっていうのは、自分の選択の上で成り立って起こっていることであって、じゃあそこで「自分がどうあるべきなのか」、とか「なんでイラっとするのか。」とかといったことを俯瞰して考えます。そうした時に、その人が何かをしたからイラっとするわけじゃなくて、自分の中にある「ある価値観」が(イライラを)生み出している。だから自分の価値観とのギャップがそこで発生してるっていうことをちゃんと認識して、じゃあその自分の価値観をどういう状態でいると、イラってせずにうまく物事が動くのか、というところに考えを発展・展開させていくような教育をしたりとか、そういう考える場を作ってあげたりとか、そういう考え方のトレーニングみたいなことはしています。あとは、自分の価値観を言語化するとか、人に伝えるとか、そういうトレーニングも併せてしていますよね。
スキルとかスキルアップのためのトレーニングっていうのは、仕事の中でやっぱりどんどん皆学んでいってくださるので、そこのレベルアップはしてくださるんですけど、その手前にある考え方をいい方向に持っていってあげることで生きやすくなる。
今自分自身もうそうですが、生きづらい世の中において、生きやすい考え方を持っていってもらうというのがありますかね。幸せを感じる考え方に変わっていってもらえるといいなと思って、そういうトレーニングをやっています。
でもね、それも誰かから何かやられたからそうなるんじゃなくて、自分で変わろうと思わないと変われないから、「人は変えられないけど自分は変えられる」っていう。
倉田:マインドチェンジみたいなことですよね。
矢津田様:そうですね、自分自身と向き合う時間というか、みんな忙しくてなかなかそういう時間がとれないんですよね。
倉田:そういうマインドの考え方で、自分がハッピーになるか、不幸になるかっていうのはすごく大事だよね。仕事のパフォーマンスにもつながってくるし。
矢津田様:そう、そこでネガティブな考え方にはまっちゃって息苦しさを抱えてしまうのって、人生の大事な時間がもったいないって思うんですよね。考え方次第で変えられるので、そこでみんながハッピーになれるようにっていう思いはすごくありますね。
あと、もう一つは今ジョブローテをめちゃくちゃ考えてます。いろんな経験をすることで、ものすごい成長するんですよ。ずっとワンポジション、ワンスキルで長くいるってことじゃなくてっていうのは考えてます。
その人のポテンシャルがどこにあるかってのは分からないので。
倉田:そうだよね、本人も気づいていない。
矢津田様:そう、まだ気づいていない可能性があって、それを探す旅みたいな感じでしょうか。

「心の教育」で自分自身と向き合う時間を、「ジョブローテ」で自分の可能性を探す旅を、社員にさせてあげたい。
「教えて育てる」教育から「自ら気づかせて育てる」教育へ。
ー株式会社AIVICK 代表取締役 矢津田 智子氏
AIVICK流の人材投資には、「生きづらい世の中で社員一人一人に幸せを感じられるようになって欲しい」という矢津田社長の思いが秘められていました。
―株式会社エス・キュー・シーと株式会社AIVICK、2つの会社が大切にしている価値観や風土とは―
矢津田様:なんだろうな・・・ホワイトです。ホワイト、だけどレッドみたいな。もともと(うちの会社には)ダークな人はいないんですよ。
倉田:それは日焼けしちゃったからとか、そういう意味ではなくて心がダークなってこと。(笑)
矢津田様:そう(笑)心がダークな人はいないから、そういう意味でホワイトかなと思うんですけど。あと、レッドっていうのは熱いというか「情熱」を持ってる。
よく言われる「ブラック企業」とかっていうよりは「レッド企業」みたいな感じで。
倉田:燃えてるね(笑)
矢津田様:まぁ燃えてるというよりは、どちらかというと静かに熱いタイプの人が多いですかね、うちは。見るからに暑苦しいっていうタイプよりは、静かに熱い、そんな感じですかね。
倉田:青い炎みたいだね。なんか見た目に反して青色の炎の方が赤い炎よりも実際には・・・。
矢津田様:そうそう、熱いんですよね。なんかそういう話ありましたよね。
倉田:あぁ、でもそっか。レッド企業だからAIVICKのロゴも。
矢津田様:赤ですね。
あとは、やっぱり「感謝」とか「思いやり」とかそこらへんを意外と言い続けていますね。
価値観風土・・・どんな風土があります?(隣にいる松岡様に問いかける)まぁ、よく「チャレンジをせい!」とかってのは言ってるけどね、チャレンジング過ぎるかもしれないよね。
松岡様(株式会社AIVICK業務企画室在籍、以下松岡様):そうですね、経営層がそもそもチャレンジングな目標を掲げていて、その下のメンバーたちもそれを追従するようにチャレンジしているから。上の人らがチャレンジしていると下の人らもチャレンジしやすいですよね。
だから、なんやろ、みんなチャレンジしてます(笑)
倉田:なにかチャレンジングな具体的なエピソードとかないんですか。
松岡様:具体的なエピソードですか。今そのSQCさんにコンサルのご支援いただいている生産管理のDXプロジェクトっていうのは超チャレンジングですよね。
矢津田様:あれこそ本当におかげさまで。本当に成長著しいと思います。
だから、何だろう・・・またチャレンジの話に戻りますけど、「薩摩の教え」でしたっけ・・・なんかありますよね。
チャレンジして成功するものはもちろん評価されます、チャレンジして失敗しても評価されます、で、チャレンジしてる人を手伝ってももちろん評価されるんだけど、何もしない人たちってのはもう評価されませんよ、あとチャレンジしてる人を邪魔する人は消えなさい、みたいな(笑)なんかとにかくあるんですよ、そういう「薩摩の教え」っていうのが。
倉田:あぁ、なんかメジャーリーグに行った選手もなんかそれと似たようなことを言ってたな。チャレンジして失敗しても一勝一敗、チャレンジしてそこに勝てば、2勝みたいな。
矢津田様:そうそう、だから結局チャレンジしたら成功がいただけるんですよね。経験によってね。
経営層がチャレンジする背中を見せてくれるので、みんながそれに追従するような、そんな風土がAIVICKにはあると思います。
ー株式会社AIVICK 業務企画室 松岡様

矢津田様:SQCさんのところはどうですか、その大切にしている価値観・風土とかって。
倉田:うちはとにかく「人」が全てだよね。「人」がいるから事業が成り立って、会社がある。これはうちだけじゃないと思いますけどね。とにかく大切にしていることって聞かれたらうちはとにかく「人」かな。
―これからの展望について―
倉田:ここまでちょっと「教育」とか「組織づくり」とか「対内的」な話をしてきたわけですけど、ここからはちょっと「対外的」なお話もお聞きしたいなと思うんですが、AIVICKさんは「上場」とか「パブリックカンパニー」に関してはどう思われますか。
矢津田様:パブリックカンパニーというか、社内の体制とか考え方とかそういったところをパブリックカンパニーと同等な仕組みで回せるようにしっかり管理運営ができる会社になりたいって思ってますね。
それは上場するためにするとかではなくて、ちゃんとした大人な会社になるためにそうなりたいなって思っています。設立20周年ということで一応ハタチなんだけど、今まだ中学生くらいかなって思っていますので、早く高校生になって大学生になって、早く社会人にならないとね。
倉田:うちはね、あのご存じのようにキャピタル入れて、MBOして減資したじゃないですか。その時点で多分監査法人通るレベルまで内部統制してるんですよね。だから今でも非上場なんですけど、全部プロジェクト単位で統制する仕組みができてます。
矢津田様:すごい、羨ましい!理想です。
倉田:幸か不幸かあのコロナの時期に東京都の助成金で全部クラウド化したんだよね。
齋藤(SQC副社長、以下齋藤):私は今会社の中で管理部門を見ているんですけど、「これもうちょっとシステム化できるんじゃないかな」っていうのが色々あって、コロナの時に倉田が「災い転じて・・・じゃないけど、なかなかこういうきっかけがないとできないからどんどんやっていこう、ってことであの時期にすごくシステム化が進んだんですよね。
倉田:だからね、昔私は給与決済の時とかは会社にいて、書類に押印したり承認作業をしたりしないといけなかったんだけど、それが今は社外にいてもどこにいても、オンラインで決裁も、押印もできるしね。営業管理もそうだし、経理もそうだし、プロジェクト単位の売上げなんかも全部営業管理も出るし、その辺の内部統制はできたらいいと思いますよ。
矢津田様:そうなんですよね、なので今回もショートレビューも入れてちょっと改善ポイントも上がってるのでここ2,3年で少しずつやっていけたらいいなって思ってはいますね。
倉田:素晴らしい。
矢津田様:上場とかはその後の話ですね。できれば、必要であればって感じですかね。でも今昔と比べて上場するメリットがあまり感じられないんですよね。上場しても大きい金額の調達ができないので、もちろんその社会的信用とか安心につながるっていうのはあると思うんですけど。
倉田:そうだね、一応東証の管理基準を超えましたっていうのは社会的に信用できるとは思いますけどね。
矢津田様:ただその毎年のコストの問題であったりとかね。
倉田:IPOが全てじゃないからね。私が副社長とよく話しているのは100年企業を目指したいねっていうのはよく言ってます。
矢津田様:社員にもストックオプションとかって僅かですがお渡しはしてるので、イグジットとかがあった時は、それもいいとは思うんですけど、そうなれるように、欲してもらえるような会社にちゃんとなりたいとは思っています。

大人な企業、欲してもらえるような企業になりたいですね。
ー株式会社AIVICK 矢津田様
100年企業を目指したいです。
ー株式会社エス・キュー・シー 倉田
―AIVICK様が挑む新たな挑戦、イノベーションとは―
矢津田様:「食事」というところが私たちの挑戦なんですけど、「食事を最適化する」ということですね。ただその「最適」も、家族に最適、とか個人にとって、とか何をもって最適なのかというのを定義することも非常に難しい。だから、そこへの挑戦というのが私たちにはあるんです。
そしてこの事業に込めた一番の願いは、皆さんが健康であるためにってことなんですけど、それも肉体的健康だけじゃなくて精神的にも社会的にも健康であるためには、っていうところを考えると食事の最適化って奥が深いんですよ。
栄養バランスだけよければそれが最適でもないし、例えば食材自体が持っている何かしらが影響してアレルギーが起こったりとか、人の体質によって避けた方がいいものがあったりとか、そして人それぞれ好みもありますしね。
それを10年後とかに、一人一人に、もしくはその家族、或いはこんな風にみんなで集まった時に、「最適」にするっていうような、そういうロジスティックも含めたチャレンジイノベーションはしていきたいなって思います。
マーケットがあるとかないとかに関わらず自分たちでその答えを作っていきたい。とはいえ、社員も食べさせていかないといけないので、もうちょっとマーケットの大きいゾーンで稼ぎながら、その稼いだものを開発投資みたいなところで回して、会社も健康的に成長できるような形には持っていきたいなと思っています。
倉田:素晴らしい挑戦、ぜひ実現してください。10年後楽しみにしています。

(左から)株式会社AIVICK 松岡様、今村様、矢津田様、株式会社エス・キューシー 倉田、齋藤、久富
※出演者の所属・肩書は2025年11月現在のものです。
